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<インタビュー>韓国の村上春樹ブーム支える 翻訳家・金蘭周さん

記事一覧 2013.08.30 13:28

【ソウル聯合ニュース】世界中で読まれている村上春樹の作品。韓国でも人気は高く、その多くが韓国語に翻訳され書店に並ぶ。新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、大ヒットとなった前作「1Q84」を上回る人気ぶりだ。不況が続く出版業界にとっては、まさに「干天の慈雨」。そんな村上ブームを支えてきたのが翻訳家の金蘭周(キム・ナンジュ)さん(54)だ。

 今では知る人ぞ知る日本文学翻訳の第一人者だが、この道を選んだきっかけは単純なものだった。「日本留学時代にのめり込んだのが村上さんの作品。韓国で一緒に文学を勉強した友人や知人らと、その面白さを共有したかった」と振り返る。

 出版社から依頼を受けたわけでもなければ、誰かから勧められたわけでもなかった。当然、出版予定もなかった。あてもなく翻訳に取り組んだのは村上作品4作目の長編小説「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」。面白いと思ったから、何も考えずに始めた。

 当時はまだワープロやパソコンがそれほど普及しておらず、原稿用紙に万年筆で一文字一文字丁寧に書き込んだ。2児の子育てや家事に追われる中、作業は家族の就寝後が多かった。苦痛だと思ったことは一度もなく、出来上がった原稿は2800枚に達した。大作を初作品として訳した達成感は今でも忘れられず、強い愛着を持っている。

 出版にこぎつけたのは1992年7月。名の知られていない新米翻訳者だったが、高く評価され業界最高水準の待遇を受けデビューした。同作品は韓国で村上ブームが本格的に巻き起こるきっかけをつくったと評される。

 慶煕大学と同大学院で国語国文学を学んだ。同大学教授の勧めで1984年に日本に渡り、昭和女子大学で日本近代文学を専攻。日本語は独学で必死に学んだ。「私の人生であれほど一生懸命に勉強したことはなかった」。当時の努力が翻訳家としての土台になったのは言うまでもない。

 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が出版されてから自然に仕事が舞い込むようになった。「ノルウェイの森」「1973年のピンボール」「国境の南、太陽の西」「レキシントンの幽霊」「風の歌を聴け」など。

 村上作品の魅力を問うと、いわゆる「村上ワールド」を挙げた。「ファンタジーというか、現実とかけ離れた『第3の世界』が小説の中で構築される。知らないうちにその世界に入り込んでしまう」

 また村上作品は一見すると米国文学のたぐいに思われるが、非常に東洋的だという。確かに村上自身も自分の作品に対し、日本を舞台とした「日本文学」だと説明している。それだけに、日本の文化や社会に触れる機会の多い韓国人が英語圏の読者よりも作品にひき込まれやすいというのだ。

 現在は、よしもとばなな、江國香織の小説を翻訳している。塩野七生のエッセーも年内に手がける予定だ。よしもとばななの作品を担当する出版社の編集者は「淡々とした文体の中に女性らしい感受性と繊細な表現力が生きている。よしもとばななの文体と最も一致していると思う」と話す。

 ビールをこよなく愛する。日本に行ったときはハウスビールを飲むことが楽しみだとか。至福の時間と言えば、ビールを飲むときとソファに寝転がって本を読むとき。寝る前2~3時間の読書は毎日の楽しみだ。

 だが、ほかの韓国人翻訳者が訳した作品は読まない。たとえそれが夫の訳したものであってもだ。実は金さんの夫は村上の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を翻訳した梁億寬(ヤン・オクグァン)さん。二人合わせれば、これまで翻訳した日本書籍は600冊を上回る。

 翻訳の難しさやチャレンジ心を知る人はそれほど多くない。誰が訳しても基本的なストーリーは同じだろう。しかし、作品から感じられるものは誰が訳したかによって大きく変わってくる。「不満に思う読者もいると思う。ただ分かってもらいたいのは、渾身(こんしん)の力を込めてやっているということ。自分の中では最高ものを脱稿している」と語った。(崔世一)

csi@yna.co.kr

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