韓国取り巻く外交・安保情勢 米新政権発足で急変の可能性
【ソウル聯合ニュース】朝鮮半島の外交・安全保障情勢は2017年、大きな転換期を迎えることになりそうだ。米国でトランプ新政権が発足すれば米中関係が悪化するとの懸念があり、北東アジア情勢の不透明感が増している。しかし韓国は、朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾審理でトップ外交が一時中断するという大きなハンデを抱えながら、北朝鮮核問題に対する韓国の方策と立場を米新政権の政策に反映させ、解決に向けた当事国間の議論を主導するという課題に取り組まなければならない。
◇トランプ氏の「取引の技術」で米中関係に荒波か
米国で来年1月20日にトランプ政権が発足する。ビジネスマン出身のトランプ氏は、米国が冷戦終結後から現政権まで維持してきた外交・安保の枠組みにとらわれず、本人の著書のタイトルでもある「取引の技術」(邦題「トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ」)を積極的に生かそうとしているようだ。
1979年の米中国交回復後、米大統領・次期大統領としては初めて、台湾の総統と電話会談した後、「一つの中国」の原則を見直す可能性を示唆した。台湾問題まで交渉材料にしようとするトランプ氏の姿勢は、今後の対中外交を予告するものといえる。
現オバマ政権は北朝鮮核問題や南シナ海問題などあつれきが生じる中でも衝突を避け、互いの体面を保ち、その一方でアジア太平洋地域の同盟国との関係強化を通じ中国をけん制してきた。こうした外交からの路線変更、または調整があるというのが外交専門家たちの見解だ。
また、トランプ氏は大統領選中に中国との貿易摩擦も辞さないと公言していた。これを実行に移し、さらに台湾問題まで踏み込む場合、北東アジア情勢の核である米中関係が深刻な対立局面に追い込まれかねないとの見方が出ている。
◇北朝鮮核問題の解決が遠のくことも
米中関係が悪化すれば、朝鮮半島情勢の先行きは一層不透明になる。中国が北朝鮮核問題の解決に本腰を入れろという米国の要求を受け入れず、むしろ北朝鮮にとっての緩衝材の役割を重視し、北朝鮮に対する制裁の履行を故意に怠るのではないかという懸念がある。
韓米同盟と韓中協力の並行に努めてきた韓国は、米中に挟まれ難しい選択を迫られそうだ。トランプ氏が次期国務長官に親ロシア派のティラーソン氏を指名したことで、北東アジアでの韓米日・中ロ朝の新冷戦構造に変化が起きる可能性についても対応が必要となる。
日本は早くも米国に偏っていた外交を多様化する兆しを見せている。安倍首相はこのほどロシアのプーチン大統領を日本に招き会談した。
◇ビジネスマインドの外交、韓米同盟への影響は
トランプ氏が米国の外交を担う国務長官に自身と同じく行政経験のないエクソンモービル会長兼最高経営責任者(CEO)のティラーソン氏を起用したのは、ビジネスマインドを外交でも生かそうとするものという観測がある。
新政権が韓米同盟の伝統的、戦略的な価値よりも同盟の経済的な損益を重視するならば、在韓米軍の駐留経費に対する韓国への負担増の要求は予想以上に厳しくなることもあり得る。トランプ氏が在韓米軍の駐留、朝鮮半島有事の際の作戦統制権の韓国軍移管などを交渉材料のカードにする場合、韓国政府は世論の反発にもさらされかねない。
また北朝鮮核問題に対し、トランプ氏が決定的な瞬間にビジネスマン時代の勝負師としての顔を見せるのではないかとの指摘も出ている。韓国との緊密な調整、あるいは北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議など多国間協議のプロセスを飛び越して北朝鮮との駆け引きに乗り出すとの予想もある。
◇試される韓国の外交
韓国はカリスマ型リーダーが率いる米中ロ日の周辺4カ国に囲まれている上、さまざまな不確定要素が存在する。国内では大統領が職務を停止され、まさに「内憂外患」の難局にあるが、北朝鮮核問題解決の突破口を見つけ国益を守るため、高レベルの外交を展開しなければならない。
首脳外交の穴を外交・安保システムでカバーし、対米・対中外交などの状況を管理すると同時に、米新政権に韓米同盟と北朝鮮核問題に対する韓国の立場を明確に認識させなければならないとの指摘が多い。専門家らは特に、米国務省の副長官や次官、東アジア・太平洋担当次官補などの人選とトランプ政権の北朝鮮政策が固まる前に、韓国政府の案を積極的に提示するなどの働きかけが必要とされる。
韓国・漢陽大アジア太平洋地域研究センターのオム・グホ所長は「トランプ政権がオバマ時代の対北政策『戦略的忍耐』を引き継ぐとは思えないため、北に対する韓国の政策も多層的なアプローチが必要だ。核問題解決に向けた多国間協力が必要との認識の下、北への制裁を行う一方で、協力と対話も並行しなければならない」と提言した。
mgk1202@yna.co.kr