[時論]THAAD配備 中国の「内部分裂」扇動に乗ってはいけない
【ソウル聯合ニュース】韓国国防部がロッテの所有する南東部の慶尚北道星州郡にあるゴルフ場を、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の配備先として確保した。京畿道南楊州市の国有地をゴルフ場と交換する契約をロッテと締結したことによるものだ。国防部はなるべく早い時期にTHAAD配備を完了させようと急いでいるようだ。THAADを配備するためには在韓米軍地位協定(SOFA)に基づく敷地供与、基地の基本設計、環境影響評価、建設などの手続きを経なければならない。当初「6月ないしは7月」を予定していたが、5月に前倒しするという話も出ている。朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領の罷免の可否を判断する憲法裁判所の弾劾審理と、次期大統領選挙の早期実施を念頭に置いた観測だ。有事の際の北朝鮮からのミサイル攻撃に備える目的で導入されるTHAADが、外的要因に翻弄されているようで残念だ。
予想通り中国のメディアは蜂の巣をつついたように騒ぎ、非難の言葉を並べ立てた。国営通信の新華社は「責任の相当部分をロッテが負わなければならない」とし、「中国の観光客に免税店の売り上げを依存しているロッテにとって悪夢になるだろう」と露骨に脅しをかけた。中国共産党機関紙の人民日報も「(韓国が)THAAD配備に同意したのは自らを朝鮮半島の火種にするもの」だと激しく非難した。
人民日報海外版の交流サイト(SNS)のアカウント「俠客島」は、「韓国に本当にTHAADが配備されれば中・韓関係が『国交の準断絶』に至る可能性もある」と危機を煽った。同メディアは、韓米両国のTHAAD配備より前に大統領選挙が行われれば時間ができるかもしれないと不可解な展望を示しもした。韓国の野党勢力からTHAADの配備を次期政権に先送りするべきとの主張が出ていることに暗に触れた形だ。
人民日報系の環球時報は、韓国製の自動車や携帯電話などに対し不買運動を行って「韓流」を中国から排斥し、ロッテも「一罰百戒」で追い出さなければならないとする。中国の国営メディアがこのような脅しをかけているようでは、「大国」を自称するこの国の格がどこまで落ちるのか心配になる。
THAAD配置に対する韓国政府の立場は断固としている。北朝鮮のミサイルの脅威に対処する目的であり、その脅威がなくなればTHAAD導入にこだわる理由もないというものだ。だが中国は、在韓米軍に配備されるTHAADを米国のグローバルMD(ミサイル防衛)の一環だと受け止めているという。米国が軍事的に自国とロシアを監視するためにTHAADを持ち込むと疑っているのだ。韓国政府はTHAADのレーダーを北朝鮮のみ観測する「終末モード」に固定させることができると説明したが、中国側は疑い🅆を解いていないと伝えられた。軍事専門家によると、THAADのレーダーは「前進モード」にすれば観測半径を約4000キロメートルまで拡張できるという。これが中国の疑いを払拭できない本当の理由だというのだ。そうだとしても、中国がこちらの説明は聞こうともせずに無礼で一方的な脅しをかけるのは受け入れがたい。
基本的にTHAAD配備は韓国の自衛権に当たる問題だ。中国の利益を侵害する恐れがあるなら、外交的慣例に従って誠実な対話で解決すればよい。特に国家間の外交問題を相手国の企業に押し付けて憂さ晴らしをするようなことは稚拙な行為だ。われわれの側にも問題がないわけではない。韓国政府がTHAAD配備用地を確保し本格的な配備の準備に入った状況にもかかわらず、政界では今なお次期政権に先送りすべきとの声が出ている。韓米の同盟関係などさまざまな安保の現実を考えると、今の段階で実現可能な主張かどうかは疑問だ。中国の国営メディアがそれとなく煽る「内部分裂」を露呈しているのではないかと気がかりでもある。本当にTHAAD問題を次の政権に持ち越してもよいと考えるなら、掛け声だけで終わらせてはいけない。現実性が担保された具体的な代案を提示して国民の判断を仰ぐのが正当な態度だ。
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