「被害者の要求」と「韓日関係」 慰安婦財団の存廃問題で苦慮=韓国
【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意に基づいて設立された被害者支援財団「和解・癒やし財団」が発足から約2年で存廃の岐路に立たされている。
日本政府が財団に拠出した10億円を韓国政府の予算で置き換えるために同額の予備費を計上する案が7月、閣議で承認されたのに続き、市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)は今月3日から財団の解散を求めるリレー形式の1人デモを始めた。
慰安婦被害者の金福童(キム・ボクドン)さん(92)は雨が降っていた3日、レインコートを着て車いすに乗り、「和解・癒やし財団即刻解散」と書かれたプラカードを掲げてデモを行った。
韓国の外交部関係者は「財団に対する方針は決まっていない」として、「被害者や支援団体、専門家らの意見を聞き、韓日関係に与える影響などを考慮しつつ速やかに決定しなければならない状況」と述べた。
財団を所管する女性家族部の関係者は「具体的な方針は決まっていないが、(慰安婦被害者の支援)事業が中断されていることを踏まえ、被害者の意見を聞き、できれば年内に方策をまとめる」として、「(別の政府機関とも)協議を進めている」と伝えた。
財団は朴槿恵(パク・クネ)前政権時代の16年7月に発足し、10億円で被害者やその遺族に「癒やし金」を支給した。生存している被害者47人(15年12月基準)のうち34人、死亡者199人のうち68人の遺族に計44億ウォン(約4億4000万円)を支払った。
だが、昨年5月に文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足してから慰安婦合意の検証を行い、10億円を韓国政府の予算で置き換えることにし、財団は存続の危機に陥った。
昨年末には財団の理事8人のうち、民間の5人全員が辞任し、財団の運営は事実上、停止している。
韓国政府が財団の解散に踏み切っていないのは、韓日関係に与える影響を懸念しているためだ。財団を解散すれば日本側は慰安婦合意の破棄として受け止め、強く反発する可能性が高い。文政権が「被害者中心主義」の観点から合意に問題があったことは認めながらも、合意の破棄や再交渉を求めなかったのも日本側の反発を考慮した措置だった。
このため、韓国政府は財団の解散に慎重な姿勢を示してきた。
今年は1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相が発表した「韓日共同宣言」から20年を迎える年で、韓国政府は韓日関係改善の機会として活用したい考えだ。両国首脳の「シャトル外交」の復活に向け、文大統領の10月訪日も取り沙汰されており、韓国政府としては財団の行方が韓日関係に与える影響を無視できない。
専門家の間でも意見が分かれている。ある大学教授は「財団は文政権に入って何の活動も行っていないのに存続させる必要があるのか」として、「民法でも設立の目的を達成できない場合、財団を解散できると定めている」と述べた。一方、陳昌洙(チン・チャンス)世宗研究所日本研究センター長は「政府が対日政策の明確な方針を立てなければならない」とし、「財団を解散するよりはその趣旨を生かし、韓日間で別の合意をし新しい形で運営してほしい」との考えを示した。
kimchiboxs@yna.co.kr