「朝鮮半島の春」目指す文大統領 米朝仲介で正念場=就任2年
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、2017年5月10日の就任から間もなく丸2年を迎える。政治、経済、社会のあらゆる分野で改革を追求したが、最も積極的に取り組んだのは何といっても朝鮮半島の情勢変化だ。
文大統領は、北朝鮮のミサイル発射や核実験で脅威にさらされた朝鮮半島に信頼の礎を一つずつ築き、平和の土台を固めたと評価される。この2年間で、望みが薄いと思われていた朝鮮半島の非核化が現実のものになる可能性を示したことは大きな意味がある。
文大統領は昨年4月に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)と初の南北首脳会談を行い、「板門店宣言」を採択。「朝鮮半島非核化」の文言を盛り込み、金委員長の非核化意思を事実上、初めて公にした。
それから5カ月後、文大統領と金委員長は平壌で3回目となる首脳会談を開催。金委員長は、北西部・東倉里のエンジン実験場とミサイル発射台を永久廃棄すること、米国の相応の措置を条件に北西部・寧辺の核施設を永久的に廃棄する用意があることを南北首脳の「平壌共同宣言」に盛り込むことに同意した。
実際に、北朝鮮は北東部・豊渓里の核実験場を爆破し、これは非核化の最初の措置と評価されている。
非核化へのこうした努力は対米関係と相互作用を起こし、米朝が外交関係を樹立して関係正常化へと進む可能性を示した。これを象徴しているのが、トランプ米大統領と金委員長の首脳会談だ。冷戦の歴史を考えると米朝首脳が対面することなど想像もできなかっただけに、両首脳が1年に2回も会談したことは大きな出来事と受け止められた。
今年2月にベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談は物別れに終わり、非核化を巡る米朝交渉は膠着(こうちゃく)状態に陥っているが、両首脳が大妥結に到達する可能性が消えたわけではないとの指摘もある。
南北関係も、国際社会の制裁という限界がある中で進展を遂げた。北朝鮮・開城に連絡チャンネルとなる南北共同連絡事務所を開設し、朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の再会行事を行った。制裁解除に備えて南北の鉄道と道路をつなぐ事業の着工式を開き、山林分野の協力も強化した。
昨年9月の南北首脳会談で軍事分野の合意を結んで以降は、軍事的緊張緩和に向けた措置も取った。軍事境界線周辺での射撃訓練を中止し、試験的な撤去対象となった非武装地帯(DMZ)内の一部監視所(GP)を破壊するなどした。
だが、ハノイでの米朝会談が決裂したことで朝鮮半島の「春」は遠ざかりつつある。文大統領は米朝対話の行き詰まりの打開を狙い、金委員長との4回目の首脳会談を打診したが、北朝鮮の反応は冷ややかだ。
北朝鮮は実務交渉相手であるポンペオ米国務長官の交代を要求するなど米国への非難を強めており、さらに4日にはミサイルと推定される「新型戦術誘導兵器」を発射し、朝鮮半島の平和は再び岐路に立たされた。
特に、金委員長は「差し出がましい仲裁者、促進者の振る舞いをするのではなく、当事者になれ」として韓国に不満を示し、米朝の「仲介役」を自任してきた文大統領も正念場を迎えている。
文大統領としては、これまで円滑だった南北、米朝関係の好循環を取り戻すことが急務だ。トランプ大統領が昨年、シンガポールでの米朝首脳会談の中止を一時表明した際には金委員長が文大統領に「SOS」を発し、非公開で2回目の南北首脳会談が開かれ、これを機に米朝会談が実現した。こうした経緯から、文大統領の仲介役は有効との見方もある。
北朝鮮による4日の武力挑発を受け、ここ3カ月に及ぶ米朝間の神経戦を管理すべきとの声は強まっている。米国との対峙(たいじ)がさらに長引けば、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に踏み切るとの懸念さえ出ている。そうなれば、これまで積み上げてきた南北、米朝関係は同時に崩壊しかねない。
非核化の方法を巡る米朝の溝を埋める努力も必要と指摘される。韓国青瓦台(大統領府)は、全体の非核化ロードマップ(行程表)に米朝が合意した後、これを達成するため1~2回の「グッド・イナフ・ディール」(十分いい取引)をするという案を提示している。完全な非核化に向け「ビッグディール」を要求する米国と、段階的な合意・履行を望む北朝鮮の意向を折衷した概念だが、米朝の双方から前向きな反応は得られておらず、双方を対話のテーブルに引っ張り出すためのより精巧で創意的なアイデアが求められている。
ハノイでの米朝会談が示したトップダウン方式の限界も克服する必要がある。トップダウンは実務者が丹念な交渉を重ねるボトムアップ方式と並行してこそ、効果を最大化できるとの指摘は少なくない。
北朝鮮の武力挑発に、韓米はそろって抑制的な反応をみせている。ポンペオ長官は5日(現地時間)、北朝鮮との対話を継続する意向を強調した。金委員長を「交渉モード」に戻すため、文大統領の役割がいつにも増して切実に求められている。
tnak51@yna.co.kr