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大接戦制した尹錫悦氏 「積弊清算」の剣士から政権交代の主人公に

記事一覧 2022.03.10 05:07

【ソウル聯合ニュース】韓国で9日に実施された大統領選で当選した保守系最大野党「国民の力」候補、尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長(61)は「国民が育てた尹錫悦」という自身のキャンペーンスローガンのように政権交代を望む国民の要望で歴史の中心に立った。

投票日前日の8日に大田市で遊説を行った尹氏=(聯合ニュース)

投票日前日の8日に大田市で遊説を行った尹氏=(聯合ニュース)

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免を受けて発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権はわずか5年の間に、発足当時の期待が高かった分だけ政権交代の世論も高まるという状況を招いた。

 検事総長として現政権と対立した尹氏は、信念を貫いて不正腐敗と闘ってきた経験を足掛かりに「運命の瞬間」を逃さなかった。

 10年前まで平凡なエリート検事だった尹氏は、情報機関・国家情報院(国情院)の大統領選挙介入疑惑事件を原則にのっとって捜査したがために、朴政権で冷遇された。

 文政権では異例の人事で高検トップを経験せずに検事総長に抜てきされたが、「積弊(積み重なった弊害)」の捜査にとどまらず、生きた権力にまで捜査のメスを入れ、同政権とも不和になった。

 その後、任期満了前に検事総長を退き、大統領選に出馬。自身のストーリーを「公正と常識の時代の精神」に置き換え、政権交代を実現させようとした。

 議員経験がないまま政界に足を踏み入れた尹氏は数多くの試行錯誤を繰り返したが、特有の突破力で韓国政治の文法を破り、最大野党の大統領候補の座を勝ち取った。

 政権交代の「道具」となるにとどまらず、成功した大統領を目指す尹氏の最初のスローガンは「国民統合」だ。理念と陣営による極限の対立を解消し、民生を安定させることは尹氏の役目となった。

◇8浪の末に司法試験合格した「尹錫悦の運命」

 尹氏は1960年にソウルで生まれた。経済的に余裕があり、教育熱心な家庭環境は好奇心の多い尹氏の性格の基礎となった。

 所得不平等に関する研究で有名な大学教授だった父親の影響で、一時は経済学者を夢見たが、より肌で感じる学問を学びたいと1979年にソウル大に入学し、法学を専攻した。

 1980年5月、民主化運動(光州事件)が起きる直前に開催された校内模擬裁判で、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領に無期懲役を言い渡し、母の実家があった江原道・江陵で3カ月間、身を隠していたというエピソードは有名だ。

 大学卒業後、8浪の末に司法試験に合格した。慶事や弔事への参加は欠かさなかったと振り返るほど周囲の人を気遣ったことも、浪人を繰り返した要因となった。

 1991年、9回目の挑戦となった司法試験を前に、結婚を控えた友人のために南東部の大邱を訪問したことがあった。大邱に向かう高速バスの中で読んだ本の非常上告の内容が3日後の司法試験に出題され合格できたという。非常上告は検事総長固有の権限だ。尹氏は非常上告と司法試験合格とのつながりを「運命」と語ったことがある。

 1994年に司法研修院の課程を修了した尹氏は弁護士になろうとしたが、3年だけ経験を積むつもりだった検事を26年務めた。

 「スター検事」尹錫悦の成長記はどんでん返しの繰り返しだった。

 大邱地検で検事としてのスタートを切り、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に大きな事件の捜査に投入されキャリアを積んでいった。

 2002年に検事をやめ大手法律事務所で勤めたが、1年で検察に復帰。古巣に戻ってからは出世街道を突き進んだ。

 豪胆な捜査スタイルで大先輩から寵愛(ちょうあい)を受け、大型事件の捜査のたびに駆り出された。そのおかげで大検察庁(最高検)中央捜査部、ソウル中央地検特殊部の要職を歴任した。

 尹氏を一躍スター検事に押し上げたのは朴政権下の2013年、国会の国政監査で、国情院による大統領選挙介入疑惑事件の捜査の過程で上層部から圧力がかかったと暴露したことだ。

 「人に忠誠を尽くさない」と述べた尹氏の当時の発言は歴史の1ページに残ったが、政権に嫌われた尹氏は左遷され、地方の高検の検事として4年余りをすごした。人々には、不当な圧力に屈しない「硬骨の検事」のイメージを刻み込んだ。

 このころ、革新系与党「共に民主党」の主要関係者から総選挙出馬を勧められたが、「検察に残り後輩たちの面倒をみなければならない」と断ったという。

◇文政権との不和、そして大統領選出馬へ

 2016年、尹氏は朴前大統領の長年の知人、崔順実(チェ・スンシル)氏による国政介入事件を捜査していた特別検察官の捜査チームのチーム長として華やかに復活した。

 文政権発足後は、朴政権を退陣に追い込んだ「ろうそく革命」の功労者として、先輩たちを差し置いてソウル中央地検長に抜てきされた。「積弊清算」のための捜査の陣頭指揮を執り、横領や収賄などの罪に問われた李明博(イ・ミョンバク)元大統領、朴前大統領に対し重刑が言い渡される判決を引き出した。

 文大統領の側近で法務部長官を務めたチョ国(チョ・グク)氏を巡る問題は、今日の「政治家としての尹錫悦」にとって転機となった。

 検察トップとして「生きた権力にも厳正になるべきだ」という文大統領の要請をそのまま行動に移し、チョ氏の家族らの不正疑惑を巡り厳しい捜査を行い、文政権から目の敵とされ、与党陣営の関係者も尹氏に背を向けた。

 チョ氏の後任の秋美愛(チュ・ミエ)前法務部長官との対立、検察の捜査権を完全に剥奪しようと試みた共に民主党との衝突が重なり、文政権との不和は取り返しのつかない状態に陥った。

 結局、昨年3月、「正義と常識が崩れるのをこれ以上見ていられない。検察で私がやるべきことはここまでだ」と辞任の言葉を述べ、任期満了まで約4カ月を残して検事総長を退いた。

 反文在寅の旗手を探していた野党側は「大型新人」を歓迎した。

 文政権と対立していた尹氏は自然に野党の有力な大統領候補として浮上。次期大統領に関する世論調査で支持率トップを走るに至った。

 全国単位の選挙で4連敗し、政権奪還のプランを立てることもままならなかった保守陣営は尹氏が切り札になるとみてラブコールを送った。

 検事総長を退いてから3カ月後の昨年6月、尹氏は「公正と常識という時代の精神」に基づき政権交代を実現させるとし、大統領選に出馬する意向を表明した。

◇政治力を立証し大統領選候補に

 昨年11月、「国民の力」の大統領選候補に選出され選挙戦に飛び込んだ尹氏は、政治家としての実力を何度も試され、成長していった。

 最初の関門は、同党の李俊錫(イ・ジュンソク)代表とのあつれき解消だった。

 大統領選の選対で李氏と尹氏側近らの対立が激化し、李氏は昨年12月に共同常任選対委員長の辞任を表明し、選挙運動から手を引いた。党の内部分裂もあり、尹氏の支持率も急落した。今年1月には党の一部幹部が李氏の代表辞任決議を提案するに至ったが、尹氏は李氏と電撃和解し、「ワンチーム」で大統領選に臨むと宣言した。

 尹氏、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事、中道系野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)代表、革新系野党「正義党」の沈相ジョン(シム・サンジョン)元代表の大統領選主要4候補によるテレビ討論会では、李在明氏がソウル近郊の京畿道城南市の市長だった時期に起こった都市開発を巡る不正疑惑について問いただし、検事が容疑者を取り調べるかのような雰囲気を演出する戦略を取った。

 また、尹氏は安氏との候補一本化の合意を取り付け、政治力を改めて立証した。

 政権交代を実現させた尹氏は、野党の議席数が与党を上回る不利な状況を克服し、具体的な成果を出すという難題を抱えることになった。

 尹氏は「共に民主党の良識ある政治家との素晴らしい協治(協力の政治)」を重ねて約束した。政治報復の悪循環を断ち切り、国民統合と民生回復の夢を実現できるかが注目される。

幼少期の尹氏(国民の力提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫

幼少期の尹氏(国民の力提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫

司法研修院への入学を控えたころの尹氏(国民の力提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫

司法研修院への入学を控えたころの尹氏(国民の力提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫

検事総長任命状の授与式終了後に談笑する文大統領(左)と尹氏(資料写真)=(聯合ニュース)

検事総長任命状の授与式終了後に談笑する文大統領(左)と尹氏(資料写真)=(聯合ニュース)

投票日前日の8日にソウル市庁前のソウル広場で行った演説で、こぶしを突き上げるパフォーマンスを見せる尹氏=(聯合ニュース)

投票日前日の8日にソウル市庁前のソウル広場で行った演説で、こぶしを突き上げるパフォーマンスを見せる尹氏=(聯合ニュース)

hjc@yna.co.kr

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