在日コリアン・金蒼生の小説「風の声」 韓国語版出版
【ソウル聯合ニュース】在日コリアン2世の作家、金蒼生(キム・チャンセン)が日本語で著した長編小説「風の声」の韓国語版が5日、韓国で出版された。「済州島四・三事件」のためにふるさとの韓国・済州から日本に逃れた双子の姉妹の「望郷歌」といえる作品で、済州島と大阪が舞台。
金氏の両親は済州島に生まれ、朝鮮半島出身者が多く暮らした大阪の「猪飼野」と呼ばれた地区に移り住んだ。「風の声」は、苦しい歳月を生き抜いた両親と在日コリアンの歴史や人生を描き出している。
韓国語版は韓国の市民団体「朝鮮学校とともにする市民の集まり―春」が出版した。韓国語訳を手掛けた同団体のソ・ウォノ事務局長は「翻訳する間ずっと、主人公とともに泣き、笑い、憤りながら一つになった」と語った。姉妹に手を引かれ、済州島に、大阪の「朝鮮市場」に、猪飼野に、そして再び済州島へ連れて行かれるという。
ソ氏は著者の娘の金民樹(キム・ミンス)さんからこの作品を受け取った。金民樹さんは在日コリアンの劇団「タルオルム」の代表として、日本社会の中で生きる在日同胞の姿を物語にし、ソ氏も台本や字幕の翻訳などで協力してきた。
「朝鮮学校とともにする市民の集まり―春」は「風の声」の出版費用と、在日同胞と朝鮮学校の生徒への差別反対運動、韓国での朝鮮学校周知活動のための資金を募るため、クラウドファンディング(www.ohmycompany.com/reward/12252)を活用している。
一方、金蒼生氏は現在済州島で暮らしている。生まれる場所は選ぶことができなかったが、還暦近くになり、両親のふるさとに居を定めると決断した。日本語でつづったエッセイ集「済州島で暮らせば」は、2018年に韓国語版が翻訳された。
四・三事件は米軍政の支配下にあった1948年4月3日、朝鮮半島の南側だけでの総選挙実施は南北分断を固定化するとして反対した済州島の島民らが武装蜂起し、軍や警察が鎮圧を名目に多くの島民を虐殺した事件。
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