[2022年総括]政権交代で尹政権発足 国政方向を全面的に見直し
【ソウル聯合ニュース】5年ぶりに保守政権への政権交代を果たした韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は就任初年、新しい政治と外交の展開に注力した。政治経験のない検事総長出身の尹大統領は帝王的な大統領制から脱するとして、大統領執務室を青瓦台(旧大統領府)からソウル・竜山に移転させた。政治・安全保障・外交・経済・社会など国政全般で革新系の文在寅(ムン・ジェイン)前政権と正反対の政策を採用している。
◇大統領執務室移転 ぶら下がり取材は中止に
尹大統領は5月10日の就任初日、竜山の国防部庁舎を改築した大統領室に向かった。韓国政府が発足して以来、74年間権力の中枢だった青瓦台の時代は幕を下ろした。尹大統領は「官庁の上に君臨し、権力ばかり独占する青瓦台では国を率いることはできない」として、反対意見を押し切って大統領執務室の移転を強行した。
空間の変化は国政運営方式の変化につながった。大統領執務室と秘書官らの事務室が同じ建物にあり、意思疎通が一層円滑になったというのが青瓦台の勤務経験がある現在の秘書官らの共通の評価である。
大統領公邸もあった青瓦台から離れ、韓国の現職大統領としては初めて通勤する大統領となった。尹大統領は約6カ月間、ソウル・瑞草洞にある自宅から通勤し、11月7日からは執務室から車で約5分かかる漢南洞の公邸に入居した。
新しい時代を最も象徴的に見せたのは毎朝、大統領室1階のロビーで行ったぶら下がり取材だった。正式の記者会見しか行わなかった歴代大統領と差別化した意思疎通への意志を示す実験的な試みとして評価を受けた。だが、リスクも大きかった。失言などにより、国政運営や支持率への影響を懸念する声も少なくなかった。ぶら下がり取材では大統領室で報道支援を担当する秘書官とMBCテレビの記者の舌戦が起きるなどし、11月18日の61回目のぶら下がり取材を最後に中止となった。
国民との意思疎通には意欲を見せたが、野党とメディアから批判を受けた一部の閣僚らについては任命を強行し、「頑固」などの指摘を受けた。
一方、青瓦台は開放から約5カ月となる10月2日に観覧客数が200万人を超える観光名所となった。大統領室は海外の要人をもてなす迎賓館の設置を見送り、今月からは主な行事に青瓦台の施設を活用している。
◇脱原発などの政策破棄 対外政策は韓米日を軸に
尹大統領は就任した際、「自由民主主義と市場経済体制を基盤に国を再建する」と訴えた。文前政権の国政方向を全面的に修正し、「正常軌道」に戻す考えを明らかにした。
尹大統領は民間主導の成長を強調し、「所得主導成長」を掲げた文前政権の国家主導の経済政策の破棄を宣言した。拡張財政から健全財政に転換し、公共機関の改革を進める方針を示した。規制地域の解除など不動産規制の緩和に乗り出す一方、大企業の法人税の減税政策も推進した。
また、文前政権の脱原発政策を「ばかげたこと」を強く批判し、原発推進にかじを切った。「文在寅ケア」を呼ばれた健康保険の保障範囲強化政策の大々的な見直しに着手し、労働時間の上限を週52時間とする制度の改正など労働改革も加速化させている。
尹大統領はトラック運転手らによる全国規模のストライキに対し、史上初めて業務開始命令を発令して対応するなど、懸案に対して「法と原則」を強調した。
尹政権に入り、対外政策も転換点を迎えた。「安米経中」(安全保障は米国、経済は中国)の路線から脱却し、韓米同盟の強化を最優先順位に置いた。
最も目立つ変化は日本を交えた韓米日の連携強化だ。3カ国は11月13日、カンボジア・プノンペンで北朝鮮問題への対応を含む包括的な協力を盛り込んだ首脳レベルの初の共同声明を採択した。
尹大統領は日本との関係正常化にも意欲を示している。北朝鮮の核とミサイル脅威が高まる中、日本も安保協力の重要性から韓国との関係正常化に応じる姿を見せ始めている。
一方、国交樹立30周年を迎えた中国との関係は不確実性が大きくなっている。
北朝鮮政策を巡っては、北朝鮮の非核化措置に合わせて経済支援などを行うとする「大胆な構想」を掲げた。異例の頻度で弾道ミサイル発射を繰り返し、核武力の法制化を発表した北朝鮮に対し、「圧倒的な対応」を明言した。
少数与党の政局で協力が不可欠な野党との関係はいまだにぎくしゃくしている。就任から7カ月が過ぎたが、最大野党「共に民主党」の代表との会合は行われていない。共に民主党が158人が亡くなった雑踏事故の責任を問うとして李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官の解任建議案を可決させたほか、文前政権で起きた北朝鮮軍による韓国人男性公務員の射殺事件、韓国から北朝鮮住民が強制送還された事件に対する検察の捜査が進められていることも共に民主党との対立を深めている。
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