韓国国防白書 北朝鮮政権と軍は「敵」=6年ぶり表記復活
【ソウル聯合ニュース】韓国国防部は16日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権で初となる2022年版の国防白書を公表した。北朝鮮が韓国を敵と見なして18年締結の南北軍事合意に繰り返し違反したり弾道ミサイル発射実験を頻繁に実施したりしていることを指摘しながら、北朝鮮政権と北朝鮮軍を「われわれの敵」と記述した。国防白書でのこうした表現は6年ぶりとなる。
国防白書の刊行は1967年に始まり、隔年で発刊されており、今回が25回目。
2022年版の国防白書は北朝鮮について「北は22年12月の朝鮮労働党中央委員会総会でわれわれを『明白な敵』と定め、核を放棄せず持続的に軍事的威嚇を加えているため、その遂行主体である北の政権と北の軍はわれわれの敵」と記述した。
「敵」という表現の復活に関し国防部は「北の対南(韓国)戦略やわれわれを敵と規定した事例、持続的な核戦力の高度化、軍事的な威嚇と挑発などを総合的に考慮した」と説明した。
国防白書は刊行当時の韓国政権が北朝鮮に対して持つ安全保障観を端的に示す。北朝鮮を「主敵」と初めて明記したのは1995年刊行の白書だった。前年の南北実務接触時に北朝鮮側の代表が「戦争が起きればソウルは火の海になる」と発言したことがきっかけで、「主敵」の表記は2000年版の白書まで続いた。
南北に和解ムードが広がると04年版白書で「直接的な軍事脅威」などの表現に変わり、保守系の李明博(イ・ミョンバク)政権発足後の08年版も「直接的で深刻な脅威」と記された。
ところが10年に北朝鮮による韓国海軍哨戒艦「天安」撃沈と韓国・延坪島砲撃が起き、同年版白書に「北の政権と北の軍は敵」との表記が再登場した。続く保守系の朴槿恵(パク・クネ)政権も踏襲した。
革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権に移り、18年版と20年版では北朝鮮を敵と見なす表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵と見なす」と記述された。
尹錫悦政権の22年版は、16年版から6年ぶりに北朝鮮の政権と軍を「敵」とした。
今回の白書は北朝鮮による南北軍事合意違反の主要事例を付録として掲載した。2年前の白書での「(北朝鮮が)全般的に合意を順守している」との評価から一転し、北朝鮮が違反を繰り返していることを強調したことになる。20年までの主な違反は2回だったが、22年は15回(日)にわたる違反があったとし、その内容を記載するとともに「海上緩衝区域内への砲射撃およびNLL(海上の軍事境界線にあたる北方限界線)より南へのミサイル発射、無人機による侵犯など、南北軍事合意での相互敵対行為の中止措置に繰り返し違反している」と指摘した。
また、北朝鮮の弾道ミサイル発射の状況も図表を用いて示した。それによると、22年1月5日から12月31日までに1日1回以上のミサイルを発射した日は34日に及んだ。11月2日には南北分断後初めて、NLL南側の海上緩衝区域にミサイルが着弾した。
国防部は「22年版国防白書は持続可能な平和を構築するための『力による平和』を基調に、わが軍の能力・態勢強化の努力と強力な対応の意志を強調した」と説明した。政府の「グローバルな中枢国」「インド太平洋戦略」「韓米同盟の強化」「韓米日の安保協力の増進」などの政策も反映したという。
国防政策に対し国際社会から信頼と支持を得るため、国防部は白書の英語翻訳版と4言語(英語、日本語、中国語、ロシア語)による要約版を今年上半期中に刊行する計画だ。
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