北朝鮮人権報告書を初公開 「青少年の公開処刑も」=韓国政府
【ソウル聯合ニュース】韓国政府は、脱北者500人余りの証言を基に作成した2023年版の北朝鮮人権報告書を31日に公開する。
政府は北朝鮮人権法が制定された翌年の17年から同報告書を毎年発刊していたが、これまでは脱北者の個人情報漏えいの恐れや北朝鮮の反発を考慮して非公開としていた。北朝鮮の劣悪な人権状況を広く知らせるため、今年初めて一般に公開する。
統一部によると、報告書は450ページほどで▼市民的・政治的権利▼経済的・社会的・文化的権利▼社会的弱者▼政治犯収容所・韓国軍捕虜・拉致被害者・南北離散家族――の4章からなる。
報告書は、北朝鮮では公権力による恣意的な生命のはく奪が存在するとし、「即決処刑」の事例に関する証言が継続して寄せられたと伝えた。殺人などの凶悪犯罪だけでなく、薬物取引、韓国の映像の視聴・流布、宗教・迷信行為など、自由権規約上で死刑になり得ない行為に対して死刑が執行されたとの証言があったとしている。
中でも女性が家庭や学校、軍隊、拘禁施設でさまざまな暴力にさらされており、韓国の映像を見たという理由で青少年が処刑されることもあったという。
報告書は、15年に東部の元山で16~17歳の青少年6人が韓国の映像を視聴し、アヘンを使用したとして死刑を宣告され、すぐさま銃殺されたとの証言を紹介した。17年には自宅で踊る女性の動画が出回り、当時妊娠6カ月だったこの女性は故金日成(キム・イルソン)主席の肖像画を指差すしぐさが問題視されて公開処刑されたという。
また、北朝鮮では食糧配給制がきちんと機能しておらず、大半の住民は個人の経済活動によって食料を手に入れている。無償治療制の運営も不十分で、医師らに現金や品物で謝礼を払う必要があるとの証言が寄せられた。
報告書はほかにも、政治犯収容所の被収容者に対する処刑や強制労働が行われており、韓国軍捕虜や拉致被害者、朝鮮戦争などで生き別れになった離散家族は監視と差別に苦しめられていると、深刻な人権侵害の実態を伝えている。
こうした内容の多くは国連や国内外の民間団体がまとめた報告書に載っていることだが、政府の報告書で扱うことで公式化する意味がある。
23年版報告書は、17~22年に北朝鮮を離れた脱北者508人が証言した約1600件の人権侵害事例を基に作成された。
証言者の女性(53%)と男性(47%)の割合はほぼ同じで、年代別では20代(31.1%)が最も多かった。居住地は中国と国境を接する両江道(59.1%)と咸鏡北道(17.3%)が多く、平壌市(10.8%)が続いた。
統一部は、国境地域の事例が多く、新型コロナウイルスの流行を受けた北朝鮮の国境封鎖で脱北者が急減したため22年以降の事例が非常に少ないという限界もあったと説明している。
権寧世(クォン・ヨンセ)統一部長官は巻頭言で、「報告書の発刊は北の人権の実質的な改善に一層努めていくという政府の意志の表れ」とし、人権侵害の実態を正確につかみ実質的な解決策を見いだすことに根本的な目的を置いていると説明した。
報告書が北朝鮮当局の意味のある態度変化と責任ある行動を引き出す役割を果たすよう望んでいるとしたうえで、「北の住民が人間的な暮らしを享受できる日まで、国際社会と連帯、協力して人権の改善へ揺るぎなく歩んでいく」と強調した。
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